2013年8月アーカイブ

『母の見たかった東京』

こんど東京に行くから、あなたの処に泊めて頂戴、と岡山に住む母から突然電話が掛かってきた。
どうせいつもの冗談だろうと思ったので、いつでもどうぞと適当に答えておいた。
すると数日後、兄からメールが入った。 「○月○日○時○分 品川着 よろしく」
しまったと思ったが、時すでに遅し。東京に所用のあった兄夫婦に連れられて本当に母はやって来た。


東京タワーと歌舞伎座が見たいというので、浜松町から増上寺を抜けて昭和の雰囲気が残る東京タワーに登った。芝から銀座まではタクシーを使ったが、いくら元気とはいえ昭和3年生れをそんなに歩かせる訳にはいかない。はてどうしたものかと思っているうちに、浜離宮から水上バスが出ている事を思い出した。そこで築地の場外で寿司を食べてから浜離宮庭園に入り、そこから浅草まで船に乗った。


幸いその日は風もなく、快適な約一時間の船旅だった。吾妻橋からすぐ近くに見えるスカイツリーを臨み、浅草寺を参拝したあと、その横手に出て都バスに乗ると、私が住んでいる田端新町の単身赴任寮のごく近くのバス停に着いた。


食事をして風呂を使った後で、いろいろと世間話をしているうちに、さすがに旅の疲れが出たのか、母はさっさと自分で布団をひいて寝息を立て始めた。
翌朝は早くから起き出して、帰ると言うので、兄夫婦が泊まっている品川のホテルまで送って行った。
兄夫婦の間に挟まれて帰りながら、時々こちらを振り向いて「ありがとう」と母は言った。


母が見たかった東京は、名所旧跡なんかではなくて定年間近に控えてもなお心配な愚息の生活している姿だったのではないかと、その時に思った。

(東京営業所 水井 勉)

(吾妻橋から見たスカイツリー)
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